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Lamp in S.B.S.

ネット物書き音沼紗春の日記。 日常と、文章について。 時々、サイトの更新情報。

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泥棒

超絶小説デイ、サイト一作目どーん。

前回のは軌跡で4月でした爆笑。
しかし語ることはない。独白だけ考えたけど、長く話しに鳴らなかったのだよ。

というわけで、続きでどうぞ。
タイトルとか考えてないです。



・誘拐しましょ

 灰色の軽ワゴン。そこらにありふれている類のもので、普通なら認識することすらなく通り過ぎてしまうような車だった。
 アイドリング中、排気をしてエンジンを回しながら停車している。排気口から水が漏れているということはクーラーをつけているのだろう。
 運転席には誰もいない。鍵はついたままだ。
 ドキドキした。小さなスーパーマーケットの駐車場。指を伸ばしただけでこの車が自分のものになる。誰かが、つまり持ち主がクーラーをかけておきたいがために、すぐに戻ってくるとたかをくくったがために、この車は今、危機にさらされているのだった。黒いフィルムが張られた後部座席の窓にも人影はない。辺りにも人影はない。
 僕は車にのりこんだ。


 ドキドキした。いつも通り過ぎてゆく町並み皆に監視されているような気分。悪いことをしてしまったという罪悪感を押さえ込む高揚感はそれはそれは気持ちよかった。
 口がひん曲がるのを堪えきれずにいると、バックミラーの中で何かが動いた。
 すーっと心が冷えていく。自分の都合のよいように考えていた。よく考えてみれば当たり前だ。いくらすぐとはいえスーパーマーケットだ。15分はかかる。郵便を出すのとはわけが違う。いくらクーラーが恋しくたって、誰もいない車に鍵をつけたままおいてくことなんてありえない。
 バックミラーの中では、ゆっくりと盛り上がった毛布がずり落ちた。
 運転手が鍵をつけたまま車を離れるなら、中に人がいるに決まっている。
「……だれー?」


「上城剛志?」
「……そうだ」
 その男の子は、こちらの姿を認めると、楽しそうに笑った。絶句しながら信号で停車すると、彼は助手席に移動してきたのだった。
「俺は、九野奈緒也」
 そして名前を聞かれた。一応誘拐されているのだが、緊張感は一切ないようだった。
「悪い」
「何が?」
「すぐ戻る。悪かった」
 訳がわからない。という顔をしていた。しかし、戻るという言葉だけ理解したようだ。
「戻るってお母さんのところに?」
「そう。出来心だったんだ。できそうだちたからやっちゃってできただけで。今思えばあの時僕何やってたんだろうって」
「わけわかんないよ!」
 奈緒也が抗議の声を上げる。むっとしてそちらを見ると、彼の方がむっとしていた。
「アンタ誘拐犯なんでしょ?」
 信号が青になる。しかしアクセルを踏めないでいた。とんでもないことになってきた気がする。なんてことだ。なんであの時車に乗り込んでしまったのだろう。
「だったら戻らないでよ、誘拐してよ!」
 唯一の救いは、後ろに車がいないこと。
「お母さんもそれを望んでるんだからっ」
 信号は再び赤になる。
 その台詞は、信じがたかった。だから焦りが一気に冷める。まだ何か言おうとする奈緒也の口を押さえる。
「わかったから、どっか喫茶店で話そう」






こっから二人のたびが始まる。らしい。
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