Lamp in S.B.S.
ネット物書き音沼紗春の日記。 日常と、文章について。 時々、サイトの更新情報。
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あとひと
あと一つ、の予定。
多分だけど。うにうに。
ちょっとつめこんだ。
実は格闘シーン書くのて好きなのだけど、今回は手抜きですうはは。
というわけで例の密室真実レインボウ。
アレスとカイちゃんと洞窟の物語。
3つめくらいです。
次で終わるといいなー。
多分だけど。うにうに。
ちょっとつめこんだ。
実は格闘シーン書くのて好きなのだけど、今回は手抜きですうはは。
というわけで例の密室真実レインボウ。
アレスとカイちゃんと洞窟の物語。
3つめくらいです。
次で終わるといいなー。
ランプを掲げ、広い空間を横切る。隅に固まった、3つの道。
「どれにするー?」
「聞くな。決めろ」
「あら、まじ? 石でも投げてみよっか」
すぐに行き止まりがあるならば、石を投げて音を立てればその音が行き止まりで跳ねて帰ってくる。そういう意味での行動だった。アレスが足元の石ころを拾って、それぞれの道の先へ投げた。
こーん、という軽い音が、返ってこない。
「うーむ、意味がなさそうだね、どうしよう?」
アレスが肩をすくめる。カイも眉をひそめて3つの穴を睨む。どれも、違いなどない。そう思っていると、一番右側の道から、からから、という音が聞こえた。
間髪おかずに、ドーンッ、という地響き。地面が乱暴に揺すられ、二人は壁に手をつく。ぶわっ、と右の道から砂煙が吹き出す。
「崩れたねえ。あれって石投げたせいかな?」
「そうなんじゃないのか?」
「まあいいや。選択肢が一つ減っただけだもんね」
「もんねって何だ馬鹿。あれが出口だったかもしれないじゃないか」
「うん、そうだったら大変だ」
アレスはひょいと、残された二つの道を覗く。大して変わりのない、二つの道。
「こっちかな」
右側、三つで言えば真ん中の道を、アレスが選ぶ。
「なんで」
飄々と歩き出した彼についていきながら、カイは問う。
「気分」
いつもなら、こんな答え方はしない。カイは唇を噛んだ。傷が深いのだ、やはり。カイのそんな苛立ちを感じとったかのように、アレスは笑って、行こ、と言う。馬鹿、と口の中で呟きながら、カイはその背中に従う。
狭くなったと思ったら、急に開けたところに出た。真ん中に、きらりと泉が光っている。天井が高く、よく見てみるとそれは木の根のようだった。ところどころ、日の光が差している。二人して、感心したように見上げる。
「ここ、離れた方がよくないか? 水場ってことは、『竜』が来る可能性も高いだろ?」
「俺もそう思う。でも、分かれ道まで戻るよりは、あの辺のどっかの道行きたいよね、随分戻っちゃうし」
4つほど、この空間からまた道が伸びている。
「んでもどっかでつながってたりするかもしんないよね、今までの分かれ道と。つーか最悪だとお部屋に訪問しちゃうよなあ」
「なら、『竜』が出てくるのを待つか? さっきの道は狭いから恐らく『竜』の通路じゃない、あそこで待てば安全だ。そして、『竜』が戻っていった道以外を選べば良い」
「いい考えかもしんないけど、どうだろ。ここに来る、って決まってるわけじゃないし、来るとしてもいつ来るか。3日くらい来ない可能性もあるでしょ」
むむ、とうなる。どちらも正論だ。待つか、進むか。
どうしようねえ、ということさらのんびりとした声が耳に届く。ランプと、天井からの明かり。それが照らすアレスの顔を見上げて、カイは、一人じゃなくてよかったと、なんとなく思った。少し青白い、どこか儚げな横顔。ぼんやりとそれに見とれていると、アレスの目がかっと見開いた。問い質すより前に、どんっと押された。随分乱暴だった。何事か、と思いながらも、アレスの向こう側に、人影を見ていた。え、こんなところに、人?
鈍い音がした。土を掘ったような音だ。体勢を整えながら、薄暗闇を見つめる。ランプは足元に落ちていた。小柄な人間だ。短剣を胸の前に構えている。両手で、直進すると宣言していた。そして、人物はふわっと突進した。がきん、と金属がぶつかり合う。アレスが小さくうめく。もう一度音がして、人物は軽々と飛んで距離を開けた。ふわふわと髪の毛が舞う。女だ、女の子。20歳にもなっていないと思われる女の子。カイはわずかな明かりの中で見極める。じっとこちらを見据える彼女に、声をあげる。
「貴女はだれ? わたし達は軍の者だ。戦う意志はない、剣をしまってくれ」
少女は無言だった。そしてアレスもまた、無言だった。
少女が地面を蹴る。
「早っ」
呆れたような、妙に冷静な声でアレスが呟く。がきん、とまた金属音。三度目ともなれば、少女は下がらない。剣を軽く引いて、また刺突をくりだす。アレスはまたそれを受ける。カイは彼が手にしているものが拳銃であることに気がつく。
「銃剣とかねえしなあ」
肩ほどに繰り出される刃先を叩いて、アレスは屈みながら足を踏み出す。無防備な横腹に、なんらかの打撃をいれようとする。拳か、銃か。だが迷う間もなく、少女は体を反転させてそのまま飛び、また距離をとった。
「おー、やりにくいね。殺す目的じゃあないし。女の子だし。ここで銃撃ったら生き埋めだし。女の子だし」
ぶつぶつと呟きながら、今度は先に突っ込んだ。少女はひるまずに迎える。がん、とか、ぎん、とかあって、やがてがきょ、という音になった。
「あああああっ、え、まじ? ちょっとありえない嘘これ結構高いっつうか実は実戦用ではなくて鑑賞用っつうかなんかかっこいいから持ってたんだけどな高いんだけどなああもったいねえっ!」
壊れたらしい。乱暴に投げられた拳銃が、カイの近くへと飛んだ。
「とうっ」
今度は棒のようなものを持っている。肩幅の二倍ほどの棒で、先できらりと光る。槍だ。分解できるようで、そうやって持ち運んでいたものらしい。
「ぬはははは、槍のほうが攻撃範囲広いんだぜ観念しろっ」
かん、かん、がきん。軽快なリズムが続いて、きいん、という鋭い音がした。アレスの槍の先端が短剣で弾かれたのだ。そして懐に少女が入り込む。えええ、と叫びながらもアレスは柄でもってその刃先を止める。どっ、という鈍い音がして、柄に短剣が刺さる。武器が固定されたという点で、アレスに有利な状況だった。しかし少女の方が上手で、短剣から手を放すと槍を掴み、そのままアレスの胸を蹴った。無理矢理槍が奪い取られたわけである。
「おい、大丈夫か」
少しの呆れも込めて、カイの方へしゃがみこんで下がったアレスに言う。ぼきっ、という音がした。
「……槍も壊された!」
「馬鹿」
くそう、と呟きながら、アレスはまた何かを取り出した。グローブのようなものだった。手首まで覆う形になっている。右手にそれをはめ、拳を打ち鳴らしてから、よし、と少女の方を向く。少女は、アレスがそれをつける間に攻撃をしてこようとはしなかった。そしてアレスの準備が整って、また突進してくる。
剣を右手でいなす。金属の入ったそれは、そのまま重い拳となって少女の腹にぶつかる。しかしやはり、先ほど弾いたはずの短剣に止められる。それでも少女の体はぶっ飛ぶ。その間に、短剣がすっ、と動いていた。
「おおうそんな馬鹿な!」
継ぎ目の部分が切られたらしい。どさっ、という音がして手甲が落ちた。
なんだかおもしろく見ていたカイだが、さすがに腰を上げた。
「どけっ」
背負っていた斧を振り回す。槍とは違うが、短剣と比べればカイの斧の方が圧倒的に攻撃範囲が広い。リズムをつけて振り回しながら迫ると、少女はひょいひょいと後ろに飛んで逃げる。
「降参しろっ、戦う理由はない!」
カイが叫ぶと、少女はふわりとバク転をした。顎のラインが綺麗に見えたと思った瞬間、少女の姿は消えていた。
「え、あ、おいっ!」
道の一つに入ったと思い、そちらに顔を覗かせるが、姿は見えない。耳を済ませてみても、何の音も聞こえない。深く集中して彼女の行く音だけでも確かめようとする。どさっ、という音がした。慌てて斧を握りしめながら振り向く。
「……アレス?」
アレスがふらりと膝をついていた。額に手をあて、その場にへたり込む。
「うわ、調子乗りすぎた。まじでやばい」
「は? お前、ちょっと、嘘だろっ?」
カイはアレスの体を揺する。力なく、ふにゃふにゃしている。ゆっくりとカイの方にしなだれかかる。
「ごふんくらい、まってて」
息も絶え絶えに言って、ふっとアレスは意識を飛ばした。カイはその体を抱える。頭の包帯には血が滲んでいる。顔も青白くて、変な汗が浮いている。
「馬鹿」
その言葉にアレスは一切の反応をしない。返事でなくとも、笑うとか肩をすくめるとか。それが、ない。カイは寂しさを感じながらも、アレスの怪我の具合を確かめる。
続
「どれにするー?」
「聞くな。決めろ」
「あら、まじ? 石でも投げてみよっか」
すぐに行き止まりがあるならば、石を投げて音を立てればその音が行き止まりで跳ねて帰ってくる。そういう意味での行動だった。アレスが足元の石ころを拾って、それぞれの道の先へ投げた。
こーん、という軽い音が、返ってこない。
「うーむ、意味がなさそうだね、どうしよう?」
アレスが肩をすくめる。カイも眉をひそめて3つの穴を睨む。どれも、違いなどない。そう思っていると、一番右側の道から、からから、という音が聞こえた。
間髪おかずに、ドーンッ、という地響き。地面が乱暴に揺すられ、二人は壁に手をつく。ぶわっ、と右の道から砂煙が吹き出す。
「崩れたねえ。あれって石投げたせいかな?」
「そうなんじゃないのか?」
「まあいいや。選択肢が一つ減っただけだもんね」
「もんねって何だ馬鹿。あれが出口だったかもしれないじゃないか」
「うん、そうだったら大変だ」
アレスはひょいと、残された二つの道を覗く。大して変わりのない、二つの道。
「こっちかな」
右側、三つで言えば真ん中の道を、アレスが選ぶ。
「なんで」
飄々と歩き出した彼についていきながら、カイは問う。
「気分」
いつもなら、こんな答え方はしない。カイは唇を噛んだ。傷が深いのだ、やはり。カイのそんな苛立ちを感じとったかのように、アレスは笑って、行こ、と言う。馬鹿、と口の中で呟きながら、カイはその背中に従う。
狭くなったと思ったら、急に開けたところに出た。真ん中に、きらりと泉が光っている。天井が高く、よく見てみるとそれは木の根のようだった。ところどころ、日の光が差している。二人して、感心したように見上げる。
「ここ、離れた方がよくないか? 水場ってことは、『竜』が来る可能性も高いだろ?」
「俺もそう思う。でも、分かれ道まで戻るよりは、あの辺のどっかの道行きたいよね、随分戻っちゃうし」
4つほど、この空間からまた道が伸びている。
「んでもどっかでつながってたりするかもしんないよね、今までの分かれ道と。つーか最悪だとお部屋に訪問しちゃうよなあ」
「なら、『竜』が出てくるのを待つか? さっきの道は狭いから恐らく『竜』の通路じゃない、あそこで待てば安全だ。そして、『竜』が戻っていった道以外を選べば良い」
「いい考えかもしんないけど、どうだろ。ここに来る、って決まってるわけじゃないし、来るとしてもいつ来るか。3日くらい来ない可能性もあるでしょ」
むむ、とうなる。どちらも正論だ。待つか、進むか。
どうしようねえ、ということさらのんびりとした声が耳に届く。ランプと、天井からの明かり。それが照らすアレスの顔を見上げて、カイは、一人じゃなくてよかったと、なんとなく思った。少し青白い、どこか儚げな横顔。ぼんやりとそれに見とれていると、アレスの目がかっと見開いた。問い質すより前に、どんっと押された。随分乱暴だった。何事か、と思いながらも、アレスの向こう側に、人影を見ていた。え、こんなところに、人?
鈍い音がした。土を掘ったような音だ。体勢を整えながら、薄暗闇を見つめる。ランプは足元に落ちていた。小柄な人間だ。短剣を胸の前に構えている。両手で、直進すると宣言していた。そして、人物はふわっと突進した。がきん、と金属がぶつかり合う。アレスが小さくうめく。もう一度音がして、人物は軽々と飛んで距離を開けた。ふわふわと髪の毛が舞う。女だ、女の子。20歳にもなっていないと思われる女の子。カイはわずかな明かりの中で見極める。じっとこちらを見据える彼女に、声をあげる。
「貴女はだれ? わたし達は軍の者だ。戦う意志はない、剣をしまってくれ」
少女は無言だった。そしてアレスもまた、無言だった。
少女が地面を蹴る。
「早っ」
呆れたような、妙に冷静な声でアレスが呟く。がきん、とまた金属音。三度目ともなれば、少女は下がらない。剣を軽く引いて、また刺突をくりだす。アレスはまたそれを受ける。カイは彼が手にしているものが拳銃であることに気がつく。
「銃剣とかねえしなあ」
肩ほどに繰り出される刃先を叩いて、アレスは屈みながら足を踏み出す。無防備な横腹に、なんらかの打撃をいれようとする。拳か、銃か。だが迷う間もなく、少女は体を反転させてそのまま飛び、また距離をとった。
「おー、やりにくいね。殺す目的じゃあないし。女の子だし。ここで銃撃ったら生き埋めだし。女の子だし」
ぶつぶつと呟きながら、今度は先に突っ込んだ。少女はひるまずに迎える。がん、とか、ぎん、とかあって、やがてがきょ、という音になった。
「あああああっ、え、まじ? ちょっとありえない嘘これ結構高いっつうか実は実戦用ではなくて鑑賞用っつうかなんかかっこいいから持ってたんだけどな高いんだけどなああもったいねえっ!」
壊れたらしい。乱暴に投げられた拳銃が、カイの近くへと飛んだ。
「とうっ」
今度は棒のようなものを持っている。肩幅の二倍ほどの棒で、先できらりと光る。槍だ。分解できるようで、そうやって持ち運んでいたものらしい。
「ぬはははは、槍のほうが攻撃範囲広いんだぜ観念しろっ」
かん、かん、がきん。軽快なリズムが続いて、きいん、という鋭い音がした。アレスの槍の先端が短剣で弾かれたのだ。そして懐に少女が入り込む。えええ、と叫びながらもアレスは柄でもってその刃先を止める。どっ、という鈍い音がして、柄に短剣が刺さる。武器が固定されたという点で、アレスに有利な状況だった。しかし少女の方が上手で、短剣から手を放すと槍を掴み、そのままアレスの胸を蹴った。無理矢理槍が奪い取られたわけである。
「おい、大丈夫か」
少しの呆れも込めて、カイの方へしゃがみこんで下がったアレスに言う。ぼきっ、という音がした。
「……槍も壊された!」
「馬鹿」
くそう、と呟きながら、アレスはまた何かを取り出した。グローブのようなものだった。手首まで覆う形になっている。右手にそれをはめ、拳を打ち鳴らしてから、よし、と少女の方を向く。少女は、アレスがそれをつける間に攻撃をしてこようとはしなかった。そしてアレスの準備が整って、また突進してくる。
剣を右手でいなす。金属の入ったそれは、そのまま重い拳となって少女の腹にぶつかる。しかしやはり、先ほど弾いたはずの短剣に止められる。それでも少女の体はぶっ飛ぶ。その間に、短剣がすっ、と動いていた。
「おおうそんな馬鹿な!」
継ぎ目の部分が切られたらしい。どさっ、という音がして手甲が落ちた。
なんだかおもしろく見ていたカイだが、さすがに腰を上げた。
「どけっ」
背負っていた斧を振り回す。槍とは違うが、短剣と比べればカイの斧の方が圧倒的に攻撃範囲が広い。リズムをつけて振り回しながら迫ると、少女はひょいひょいと後ろに飛んで逃げる。
「降参しろっ、戦う理由はない!」
カイが叫ぶと、少女はふわりとバク転をした。顎のラインが綺麗に見えたと思った瞬間、少女の姿は消えていた。
「え、あ、おいっ!」
道の一つに入ったと思い、そちらに顔を覗かせるが、姿は見えない。耳を済ませてみても、何の音も聞こえない。深く集中して彼女の行く音だけでも確かめようとする。どさっ、という音がした。慌てて斧を握りしめながら振り向く。
「……アレス?」
アレスがふらりと膝をついていた。額に手をあて、その場にへたり込む。
「うわ、調子乗りすぎた。まじでやばい」
「は? お前、ちょっと、嘘だろっ?」
カイはアレスの体を揺する。力なく、ふにゃふにゃしている。ゆっくりとカイの方にしなだれかかる。
「ごふんくらい、まってて」
息も絶え絶えに言って、ふっとアレスは意識を飛ばした。カイはその体を抱える。頭の包帯には血が滲んでいる。顔も青白くて、変な汗が浮いている。
「馬鹿」
その言葉にアレスは一切の反応をしない。返事でなくとも、笑うとか肩をすくめるとか。それが、ない。カイは寂しさを感じながらも、アレスの怪我の具合を確かめる。
続
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