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Lamp in S.B.S.

ネット物書き音沼紗春の日記。 日常と、文章について。 時々、サイトの更新情報。

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いさむなので

寒いのでわたしはこたつと友達になってきます。
冬は大概そうなるのでぶっちゃけ、PCの接触時間が減ります。

紗春です。

というわけで寒いので密室真実レインボーです。熱いんです。寒いけど。
ええと今回はー

竜シリーズ レミネ様

より、アレスとカイちゃんをメインにお送りします。アレスいいよ!
ところでカイちゃんはわたしの中では勝手に褐色肌ですなぜ。
ちなむと実は2話? か3話くらいの構成ですがんばう。
ノリで書いたのでノリで読んでね。とりあえず長めの一話どーん。


・洞窟の奥の宝箱の内側にある世界の洞窟の

 うっそうとした深い森。人を見たことのない木々が驚き、身を固めている。
 10人の人間が、列を成して歩いていた。身にまとうは臙脂色の軍服。険しい表情で、葉の生い茂る枝をくぐる。
「お、あれ? あれだよな? おー、到着ー」
 険しく凛々しい群れの中でひょうひょうと言ったのは、濃い青色の髪をした男だ。適当に長い、主そのままを表すように自由にはねあがっていたりいなかったりする。耳元にはピアスが揺れ、なんとなくの不真面目さを語っている。彼は一人だけ、ピクニックに来ているかのように楽しそうな笑みを浮かべている。アレスは、一人場違いだった。
 彼らは『竜』の討伐隊である。太古よりこの地に住み、幽玄にそびえる『竜』。珍しいそれらは人によって狩られ、足の遅い肉として人は『竜』によって喰われた。被害も憎しみもいつしか広がり、やがて当然のように『竜』は人を襲い、人は『竜』を討つようになった。その『竜』を討つ剣の切っ先のひとつが、ここにいる10人の討竜士である。
 地層を無理矢理にずらしてしまってできたような、そういう場所だった。荒い土と石がむき出しになっており、日を浴びて白っぽい粉を吹いている。帯のように走ったそれの真ん中に、ぽかりと穴が開いていた。
「入るよ?」
 アレスがひょいと言い、ぶらぶらと公園を散策しているかのようにその洞窟の入り口へ寄る。身をかがめて中を覗いてから、すたすたと入っていく。
「うわおっ」
 ずささという音がしたかと思うと、そんな叫び声が聞こえた。眉根を寄せて他の討竜士達が視線を合わせる。そんな中から、一人が洞窟の入り口へ頭を突っ込んだ。日に焼けた茶髪は極端に短い。巨大な斧を携えた、少し珍しい女性討竜士、カイは洞窟の中で転がっているアレスに哀れみの視線を投げた。
「お前、何やってるんだ」
「いやあカイちゃん。これがまたおどろきなことに滑って転びました」
「奥は見えるのか」
「少しは心配してよー。いいけどね、俺知ってるよ、カイちゃんがほんとはこころげふ」
 入ってすぐに、急な下り坂になっていた。坂よりもがけに近いかもしれない。数m続くそれを軽く飛び降りて、カイはアレスの腹に蹴りを入れた。
「さっさと起きろ。襲われるぞ」
「カイちゃんに?」
 無言の蹴りがアレスの頭を襲った。カイは何事もないように、洞窟の先を覗き、入り口の方に声をあげた。
「聞こえますか?」
「ああ、聞こえる」
「入ってすぐに斜面になってますので気をつけてください。これはそれで転んだようです。負傷はなし」
「ちょっと頭が痛いですカイちゃんの愛の鞭のおかげで」
「奥はまっすぐに道が続いているようです。天井はこいつで頭ギリギリかと。道幅は、1列なら余裕ですが2列は少しきつい程です。暗くてその先までは見えません」
「わかった、我々も降りる」
 カイはアレスの腕を引いて斜面の終点から離れた。少ししてから、ずるずると地面を滑る音が幾重にも聞こえ、討竜士達が降りてくる。そのうちの一人が、松明をつけた。
「降りた順でそのまま行こう。狭くて入れ替わることも難しそうだ」
「おっけー、俺いっちばーん」
 アレスが笑いながら先へ行く。カイは、怖いから後ろがいいだけだろうに、とわずか軽蔑を後ろに投げかけてからアレスに続いた。暗闇の中、カイの投げた視線にも気がつかず、カイの後ろの男が松明をかざしている。いくつかおいた後ろにも、2つほど松明の明かりが見えた。カイはさらに蔑視する。先頭に松明を持たせないとは。明かりを独占したいなどと、臆病じみたことを考えているのだろうか。そういえばこの、中年じみた隊長の男はアレスが嫌いなのだと聞いたことがある。そのせいか。
「カイちゃんこっち」
 突然腕をとられて、引っ張られた。ささやくように言った言葉は緊迫した雰囲気はなく、一瞬だけカイの脳裏に豪華なパーティ会場がよぎった。そういう雰囲気だったのだ。
 よろけそうになるところを支えられて、何事かと振り向く。
「おあっ」
 カイが振り向くと同時に、隊長の男がすっ転んでいた。尻餅をついている。大丈夫ですかと後ろの松明が寄ってきて、彼の足元を照らした。
 大きな溝だった。土がえぐられたような、縦幅が広めの1歩分、横幅が同じく3歩分、深さはあまりなく、足を入れてもくるぶしが見えなくなる程度だろう。
 隊長の男はそこに足を踏み外して転んだようだった。そしてアレスが腕を引いたのは、カイがそこで転ばないように誘導したらしい。
「足をとられたか。大丈夫だ」
「それ、爪痕ですかね」
 一人が言って、ふむ、と隊長の男も言った。
「段々と道も広くなっているし、この辺りまで『竜』も出てくるのかもしれん」
 隊列の空気が、少し変わった。緊張と恐怖が、やや濃くなった。
 しかし先頭の男は変わらない。ひょうひょうと、軽い足取りで先へ進む。
「おい、アレス」
「なあに?」
 背を追いながら、カイがささやくように言った。背後の人間に聞こえないようにしたかったのだ。
「お前、なんで今」
 突然に、地響きがした。丁度竜の雄たけびのようだった。
「うわ、なんだっ」
「『竜』が暴れているのかっ?」
 それぞれに壁に手をついて奥の方に目を凝らしている。『竜』が、縄張りに侵入してきた虫を追い払おうと出てくるかもしれない、今の揺れはその前触れなのかしれない。そういう、思いで。
「あいた」
 やはりそれは、とてつもなく浮いていた。間の抜けた、情けない声。アレスは頭をさすりながら、上を見上げる。それにつられるようにカイも上を見上げた。
 亀裂が走っていた。
「どえええっ?」
 ぱらぱら、と小石が落ちてくる。アレスの間抜けな声で、後方の皆も今この天井が崩れかけていることに気がつく。
「さ、下がれっ、早くっ! 崩れるぞっ!」
 振り向いたカイの目先で、隊長達が逃げていく。自分も危ない。カイは彼らの後に続こうとして、鈍い音を聞いた。妙に響く、固いものが人にぶつかったとしか思えない音だった。ぞっとした寒気が、最悪の予感さえもがカイの脳裏によぎる。後ろを向くと、丁度アレスが倒れようとしているところだった。ふらり、と、痛みに顔を歪め、壁に寄りかかる。
「アレスっ?」
 カイは不安定な地面に足をこわばらせながらも、一歩そちらへ寄った。ぱらぱら、と砂が降ってくる。それが、目に入った。
 反射的に、壁をたぐっていた手が目元に行く。しまった、と思う間もなく、ぐらりと自分の体がぶれた。
「っ馬鹿……!」
 アレスの声を耳にして、乱暴に引っ張られて、土砂の落ちる音を聞いて、肩に何か重いものが当たるのを感じて、そしてカイは、意識を失う。


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