Lamp in S.B.S.
ネット物書き音沼紗春の日記。 日常と、文章について。 時々、サイトの更新情報。
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そしてまた
そしてまた。
虹。原作はレミネさんとこの蒼狂学園。アレス。
リベンジのつもりだったのにいまいち明るさが足りない。
そしてなぜか6000文字もある。なぜだ。
もっかいリベンジしたい。てか本当は他の虹もしたい。
創作もしたい。つうか書いてある奴手直しして更新もしたい。
だけど、なぜかしない。
なぜだ。
虹。原作はレミネさんとこの蒼狂学園。アレス。
リベンジのつもりだったのにいまいち明るさが足りない。
そしてなぜか6000文字もある。なぜだ。
もっかいリベンジしたい。てか本当は他の虹もしたい。
創作もしたい。つうか書いてある奴手直しして更新もしたい。
だけど、なぜかしない。
なぜだ。
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絵になるのはやっぱり海だ。
道路の片側に、ガラスの破片のような月明かりが落ちた黒いペースト状の海。もう片側には、簡単に剥がせるシールでできたようなファミレスやゲーセン。その間、片側一車線で大して混んでいない道を切り裂くようにバイクで走っていったら、さぞかし絵になるのだろう。絵といっても静止画ではなく、多分動画。それはきっとドラマか映画の一場面なのだ。
そんなことに思いを馳せるアレスがバイクを走らせているのは、海ではなく山だった。緩やかに上ったり下ったりする山道。ぺらぺらした磁石の表面のような、白い線だけ描かれたアスファルトの上をスーパーカブが走っている。白っぽい、側東部と高等部まで覆うヘルメットにごついゴーグル。誰も通らない、土が露わになった山肌と先っぽだけ見える木々にはさまれた真っ暗な道を行くアレスは、大した絵にはならないようにみえた。
スーパーカブは知人のものだ。だが免許は持っているので問題はない。そして、今、0時過ぎ、水曜日になったところ、ここ、学園から3kmほど離れた場所にある山の、曲がりくねって波打っている山道、を走っていることに、特に理由はなかった。
ふんふんふん、と適当な鼻歌を歌いながらハンドルを右に曲げる。視界が回りながら、体が弱い力で外側にひっぱられる。まるで子供に袖を引かれているような気分だ、とアレスが心の中で苦笑すると、道の先に女の子が見えた。一瞬、目が点に鳴る。瞬きをしても、その姿は消えない。
道はあまり左右には曲がっていないが、上下には曲がっていた。少しだけ下り、また上る。次の一番高いところに女の子は座っているようだった。左車線のど真ん中。気がつかなければ、アレスのバイクと正面衝突する場所だった。
どう考えても、真夜中の人のいない山道に女の子がいるというのはおかしかった。耳の上辺りで二つに縛った髪の毛。暗くて分かりづらいが、服は桃色のシャツと半ズボンだ。年は小学校に上がったくらいに見える。そしてどうも、泣いているようなのだ。
何かに化かされているような気分になりながら、その少女の傍に減速しながらバイクを寄せる。ライトがぐちゃぐちゃな泣き顔を照らした。その表情を見て、アレスの中から、彼女が幽霊とか妖怪なのではないかという考えは消え去った。それは確かに、気味が悪いほどに「人間の表情」だった。少し迂回して彼女の横に止めようとすると、彼女は這うようにしてバイクにすがりつこうとした。驚きながらも、タイヤに触れられては彼女が怪我をしてしまう、と避け、停車した。足を下ろして少女を見下ろす。
「君、何してんの?」
下手なナンパみたいだった。だがツインテールの人間の女の子は般若みたいな顔をしてアレスの足に飛びついた。驚いて足を引こうにも、がっちりとつかまれていた。小さく小さく、声を押し殺した泣き声が聞こえた。躊躇ってから少女の頭に手を乗せる。
「どうしたんだよ、こんなとこで。一人で、女の子が。君幽霊? 俺霊感ないんだけどなー」
困った様に言いながらも、適当に明るく言った。ぎゅっ、と少女はズボンの裾を強く引いた。泣き顔を上げて、かすれた声で少女は言う。保育園か幼稚園、小学校とか両親に誰もが習った言葉で、多分半分以上の人間が一生言わない言葉。
「……たす、けてっ……」
「……立ちな」
顔を拭きながら、少女は立ち上がった。よく見ると靴を履いておらず、白っぽい靴下にはレースと泥がついていた。シャツの袖で乱暴に少女の涙を拭ってから、手早くヘルメットを外した。ゴーグルだけは首に落としておく。調整をしてから少女の頭にかぶせ、顎の下で止める。脇の下に手を入れて少女の体を持ち上げると、ぐい、と持ち上げた。座布団のしかれた後部に乗せる。きょとんとした表情の少女に顔を寄せる。
「いいか」
すると、バイクの前方で、崖になっている側からガードレールをまたいで数人の影が現れた。どこだ、あれか、見つかったか、などとやりとりしているのが聞こえた。大して大きい声ではないのに、静かな山道ではよく聞こえた。ぎゅっ、と少女がアレスの腰にしがみつく。
「足はここにひっかけといて、絶対に下に降ろしちゃダメ。タイヤに当たるとマジでやばいから。あと、手、もっと前に回して。こう。これも絶対に離しちゃダメ。何か言いたいことがあったら、指でつんつんってしてくれればいいから」
言いながらスターターに足を掛け、ゴーグルを装着。OK? と確認すると、背中で少女が大きく頷いたのがわかった。止まれ、動くな、と叫ぶ男達。アレスは勢いよくスターターを蹴った。男達が自分達に向かって来たバイクに驚いて立ち止まるのを見てから、ぐるりと大きくUターンする。少し大きめにターンしたのは、もちろん後ろに乗る少女のためだった。
アクセルを吹かして傾斜を降り、また上る。バイクの排気音がうるさい。ミラーで確認すると、男達が走って追いかけてくるのが分かったが、その姿は段々小さくなっていく。冷や汗を感じながらも、口元が大きく笑っているのが分かった。時々ミラーの中を確認しながら、アレスはやや急いで山道を引き返していく。
少しずつ、町の明かりが見えてきていた。速度を落として、少女にそちらを促す。背中にくっついていた額が離れ、わあ、という感嘆の息が聞こえた。オレンジ色が多い。夜景はいつもそうだ。それから白、そして赤、黄。点在して明滅する明かり。夜景。時々木々が邪魔する間から、誰かのロングコートみたいな黒地の上に無秩序に展開されている光の粒を、アレスは名も知らぬ少女と眺めていた。トラックとすれ違う。つんつん、と腹に刺激。少女が何かを伝えたいらしい。どうした、と聞こうと思ったが、聞かずとも分かった。後ろから黒っぽいワゴン車がついてきていた。少女がアレスの腹を強く抱きしめる。
「やべーなー、追われてるよなー。怖えってまじで」
歌うようにアレスは呟く。ミラー越しにナンバーを確認する。暗くて地域名が読み取れないが仕方がない。平仮名とナンバーだけ分かれば、それだけでも上等だ。大きな声で叫んで少女に伝えた。
「覚えとけ。覚えて、そんであとで大人に言っときな」
もう二度言う。少女は背中で頷く。くすぐったいな、と思いながら、ミラーの中に映るワゴン車が大きくなっているのを確認した。だが、どう逃げろというのだろう? 山道なんて一本道だ。それることなんてできやしない。山に飛び込むにしてもスーパーカブだし、崖の角度はかなりきつい。そして小さな女の子を乗せている。逆方向に逃げるという手もあるが、そちら方向だと町まで降りるのに時間がかかる。それまでに、多分また追いつかれてしまう。
「どーしよっかなーっ」
一人小さく呟いた。映画の誰か、あるいはアレスの担任の先生なら拳銃でパンクをさせるくらいのことをするのかもしれない。だがアレスは拳銃など持っていないし、それ以外のものも持っていなかった。手ぶらなのだ。
山道に慣れているのか、ワゴン車はどんどん近付いてくる。それを防ぐ手立てが、ない。
やばいなあ、と心の中でゆっくり呟く。やや急な右向きのカーブを、減速しながら曲がる。減速したくはないが、ここで事故を起こしてしまう方が取り返しがつかない。しかも外側が崖なのだから慎重にならざるを得ないのだ。ああ、本当、どうしたらいいんだ。ため息交じりに心の中で呟く。すると突然、カッ、と二つのライトが目を刺した。ぎょっと驚きながらもブレーキを強く握りしめる。きゅきゅきゅ、と向こうの車のタイヤが音を立てた。赤い、オープンカーのようだった。運転手の顔さえ分からないのに、なぜかそこにネコが乗っているのが見えた気がした。ギリギリ接触せずにすれ違う。引きつった笑みを浮かべながら通り過ぎ、少しして止まった。背後で小さな衝突音が二つ聞こえた。振り返ると、オープンカーが反対車線まで跳び越してガードレールにぶつかっていた。そこにワゴン車も追突している。ワゴン車も急カーブで減速していたらしく、目をふさぐほど変形した部分は見えなかった。オープンカーとワゴン車からそれぞれ人が降りてくるのを見て取ると、アレスは背を向けた。そのまま走り出す。叫ぶ声が聞こえたが、気にしない。ぎゅっと腹を抱きしめる少女の温もりだけ感じて、アレスは山道を走る。カーブを曲がると、ミラーの中にも車達は見えなくなった。
無事に山を降りると、見知ったファストフード店でバイクを止めた。停止したバイク脳で一息つき、頭だけで振り返り、ゴーグルをずらしながら改めて少女を見た。
桃色のシャツにはさくらんぼのプリント。デニムっぽい半ズボンに、白いレースの靴下。染められずに黒い髪の毛は高い位置で二つに縛っている。かわいらしくて幼い顔立ち、やはり小学1年生前後に見えた。そして靴下をはじめ、ズボンや膝、シャツに腕に顔にと土と涙の乾いた跡で汚れているのだった。よくみると、擦り傷のようなものもたくさんある。
「で、何してたんだよ」
アレスのシャツの裾をつかんだまま、少女はうつむいた。むすっとした唇から息が漏れている。
「おとなしく、してた」
「……そうなんだ?」
「ままがおかねはらうまで、まってた」
「……そうなんだ」
アレスは乾いたような笑みを浮かべ、ははは、と無理矢理笑った。うーん、と考えるようにしてから、もう一度少女に向き直った。
「自分の家、どこか分かるか?」
大きく頷いた少女は住所を告げた。地域の名前で大体の範囲は分かるが、自分が住んでいる場所ではないので丁目がわからない。笑みを浮かべながらも悩むが、まあいいや、とバイクのエンジンを入れる。
「大体そのあたりまで行くから、指差して道教えてよ」
「わかった」
頷いたのを確認して、いい子だなあ、とヘルメットの上から頭をなで、スターターを蹴る。ファストフード店を出て、先ほどよりもうんと遅いスピードで車の間を走った。山が見えている。だが、どこを通ってきたのかは分からなかった。
途中まで来ても、少女は家が分からないといった。困ったが、タイムリミットがあるわけではない。ほとんどしらみつぶしのようにして道の一本ずつを通る。指差す方へ、指差す方へ、と適当に曲がった。
「ここ、さっきもとおったよ」
「いやいや、お前の言うとおりに進んでるんだって」
からからと笑いながら、夜の静かな住宅街を進む。
「暗くてわかんない。たぶんこのへんだけど」
バランスが取れるギリギリの速度で進むが、少女は不安そうな声を出すだけだった。詳しい住所など、アレスにも分からない。夜中の0時だから通行人も見当たらないし、そう、夜だから少女には見慣れない住宅街に見えるのだろう。
小さな交差点を通り過ぎようとして、アレスは急停車した。どうしたの、という声に振り返りながら、そちらを指差した。数軒先のそのまた数軒先辺りの家だった。玄関の前に一台の車が止まっており、二人の男性がそのそばに立っている。それだけでも少しおかしいように思えた。しかし、0時を回って、すでに1時近いこの時間なのに、その家にはしっかりと明かりがついているのだった。それは、誰かが活動しているということ、もしかしたら少女の帰りを待っているのかもしれないではないか。
「あ、あそこだ」
少女の声を背に聞く。アレスは半身振り返り、少女の頭のヘルメットを取り上げた。不思議そうにアレスを見上げる少女。アレスはにっと笑った。ヘルメットをハンドルにひっかけ、少女の脇に手を入れると、ひょいと持ち上げてバイクから降ろした。少女は今も、きょとんとしている。ゴーグルを上にずらしながら、白い、汚れた靴下に目をとめる。少し迷ってから靴を脱いで、少女の前に置いた。少し悩んでから、それ履け、と告げた。10cmほど違うサイズの足が、中に入る。少女はまたアレスを見上げる。
「覚えとけ、って言った番号、覚えてるか?」
少し悩む素振りを見せてから、少女は頷いた。なら、とアレスは覆面パトカーの止まった少女の家を指差す。
「帰りな、自分の家に」
ぱっ、と笑顔を輝かせた少女は、髪の毛が揺れるほど大きく頷いて、アレスに背を向けて歩き出した。走ろうと思っても靴が邪魔をして走れないのだろう。その不恰好な走り方に少しだけ苦笑する。家の前の刑事らしき人間が少女の姿に気がついた。それを確認して、アレスはヘルメットとゴーグルを被る。そして、背を向けて、靴下を履いているのみの足でスターターを蹴る。
なんだか愉快な気持ちで鼻歌を歌いながら大通りに出る。どこへ行こうか、と悩みながら、またファストフード店に戻った。家に帰ればいいのに、と心の片隅で思いながら入り口付近でバイクを止め、さて、と悩む。悩み始める丁度その瞬間くらいに、思考が遮られた。
「あー、アレスじゃーん」
どこかまがまがしいような、ねっとりした声。振り替えると、紫色の髪が妙に明るさを持って見えた。その人物は、この夜に存在する何よりも輪郭が濃く見えた。手を振りながら、彼女はこちらに近付いてくる。ほんの一瞬だけ、大きな鎌を持っているように見えた。露出の高い服装。テンションの高い笑顔。学園に存在する、神出鬼没の謎の少女、リアル。
「アレスぅー、こんな夜中になにしてんのぉー?」
「いんや、別に。涼みに来ただけ?」
「夜遊びぃ? あ、悪い奴発見ー」
「いやいや、お前もだろ」
「あ、バレたー?」
くすくす、という笑い声がはっきり耳に届く。背後で車が行き交っても、その声がかすれることはない。ふーん、と言いながらリアルは後部の座布団を叩いた。
「あ、これ乗れるんだ?」
「違反だけどな。今ヘルメットないし」
「乗せて乗せてー。リアル、ヘルメットとかいんないからまじで」
楽しそうに嬉々と笑うリアル。いいでしょ? と片目のみでアレスの顔を見上げる。
「いいよ」
間髪おかずに答えていた。やったー、と騒ぐリアル。やはりゴーグルは首に落としてヘルメットを渡すと、いらないと言っていたわりには何も言わずに受け取った。適当だなあ、と苦笑しながら、ゴーグルをかけ、ハンドルに手を置く。リアルがバイクにまたがって、揺れた。
「あ、アレス靴はいてなーい。なんでなんでーっ」
「あー、これな、走ってたら落っことした」
「まじで? チョーうけるんですけど、アレスさいこーっ」
腹を抱え、大空に向かって大きく口を開けながら、リアルが笑った。やだー、ひどいー、と嘆いてみせてから、スターターに足を掛ける。リアルの腕が腰に回った。それは何気ない動きだったのだが、ひどく冷めた動きのようだった。スターターを踏みつける。
「ねえ」
体をぴっとりと寄せるようにして、その唇の動きがシャツ越しに分かるほどの距離。
「ねえ、アレス?」
「なんだよ」
からからと笑いながら答える。車道を進む。すれ違った車が、山で見たあのワゴンに見えた。小さく笑う。
「何してたの?」
すうっと冷めたような、怒られているような気分になる声だった。バイクの騒音と行き交う車の騒音で聞き取りにくいはずの声は、耳元で囁いているかのごとくはっきりと聞こえる。何故なのだろう。
アレスは、笑った。背後でリアルが驚くのが分かって、笑った。大きく口を開けて、空を仰ぎながら、大きな声で笑った。危ないって、と慌てるリアルさえも面白く思えて、アレスは、笑った。
「もう、なんなのアレス。リアルわけわかんない。てゆうか、どこ行くつもり?」
「馬鹿だなー、りあるんは」
アレスはアクセルを吹かす。速度が少しずつ上がっていく。髪の毛とシャツが暴れて、靴下のみの足が少し涼しい。口元が笑っている。それがわかって、アレスはもっと笑った。
「海に決まってんだろ!」
了
ばっちし長くてごめんなさい。
女の子は普通に誘拐されてましたそんな感じ。
りあるんりあるん。あれすあれす。そんな感じ。
ところで赤いオープンカーはかろうじてれみねこの差し金なんだぜ。
リアルんでかろうじて明るいけど全然明るくない。なぜだ。
バイクに関する知識は想像の産物ですファンタジー。
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