Lamp in S.B.S.
ネット物書き音沼紗春の日記。 日常と、文章について。 時々、サイトの更新情報。
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密室真実の1
15号が低気圧になっちゃった(´;ω;`)ブワッ
にゃんk-、紗春です。
密室真実。
適当掌編小説もどきのカテゴリ名。
ほぼ推敲なし、なんとなく書きました的なお話を。
感想は受け付けてますが、アドバイスは多分却下。
アドバイス受けてたら多分全部酷評だからね。
というわけで、一回目。
「ぱんつ」
にゃんk-、紗春です。
密室真実。
適当掌編小説もどきのカテゴリ名。
ほぼ推敲なし、なんとなく書きました的なお話を。
感想は受け付けてますが、アドバイスは多分却下。
アドバイス受けてたら多分全部酷評だからね。
というわけで、一回目。
「ぱんつ」
「ぱんつっ!」
目覚めがこれって、乙女としてどうなんだろう。
どうにもこうにもなくて、とりあえずわたしは今、そうやって目覚めてしまった。
一瞬にして夢と現実が入れ替わり、意識がついていけない。
やっと朝なのだと気がつくと、ぱんつがどうしたんだ? と首をひねる。
と、後ろで目覚まし時計が鳴った。
目覚まし時計が鳴る前に起きるなんて、ぱんつ様様だ、と振り返りながら時計を引っつかみ、音を止めながら時計盤を覗き込む。
そうだ、思い出した。
目覚まし時計には、スヌーズ機能といって、設定時刻の後も5分毎等で鳴るものがあるのだ。
思っていた時刻よりもとてつもなく後を示す時計を見て、わたしは咄嗟に叫んだ。
悲鳴という奴だ。
何か言葉だったような気もするが、それを記憶している余裕さえなかった。
とりあえず、「ぱんつ」ではなかった。
「何、寝坊したの?」
丁度担任が授業をやっている時間に飛び込んだわたしは教壇の横でこってりしぼられた。
こってり、というととんこつラーメンしか浮かばない。
くすくす笑いの中席に着くと、後ろから彼が話しかけてきた。
ユウキとかいう何の変哲もない普通の名前の少年だ。
「そうだよ」
「ここ跳ねてる」
「うそっ!」
小声の会話ながら、とっさに叫ぶ。担任はこちらを咎めたりはしなかった。
わたしは慌ててユウキの示す部分に手を当てる。
奇怪な方向に曲がった髪の毛が手探りでわかる。
そのまま逆方向にひねってみるのだが、ばねのように元に戻ってしまう。
くそう、馬鹿みたいじゃないか。というか馬鹿じゃないか。
「直したげる」
ユウキが手を伸ばして、少しの間、わたしの手と触れ合った。他人の体温。
しぶしぶと自分の手を離し、頭は動かさないままカバンと机と教科書類の調整をする。
机の上に教科の本とか筆記用具を置く。
ユウキはワックスだかムースとくしを取り出して器用に髪をいじっている。
振り向きたいのだが、振り向いてもユウキが髪をいじっている姿を見ることはできない。
せめて気持ちだけでも、と顔はそのままに目を左側にめいっぱい向けるのだが、もちろん見えない。
どんな表情をしているのだろう、と思う。
真剣に? ぶっきらぼうに? 楽しそうに? くすくす笑いをこらえるように?
見えないなあ。
「ん、直った」
「ほんと? わー、ありがと」
手で触ると、今まであった奇怪な髪の毛がない。少し湿っているが、おかしなところはない。
少しだけ振り向いて、もう一度礼を言う。
すると担任の注意の声が飛んだ。
渋々と前を向く。担任が黒板に向いたところで後ろへ向こうとするのだけど。
フェイントだった。担任はすぐにこちらに目を向けた。
ぎょっとする。
黒板にチョークを滑らせながら、しかし担任は2秒おきにはこちらを見ていた。
ええと、どうしよう。
ユウキが不意に、わたしの頭を撫でた。
よしよし、とかそういう意味なのだとは思う。でも、どういう意味の「よしよし」だ?
振り向こうにも、担任が2秒おきにこちらを見ている。
ユウキは器用にも担任から見えないようにやっているらしい。
まあ、担任はわたしが後ろを見ているか否か、を監査しているようなのではあるけど。
よしよし、とユウキはわたしの頭を撫で続ける。
不意に、この手が離れることが怖くなった。
そうしたら、いるかどうかがわからなくなってしまう。
何度も振り向いて、先生にしかられながら、ユウキの存在を確かめなければいけなくなってしまう。
わたしのこんな不安を、ユウキは知らない。
ユウキがどんな意味で頭をなでているのか、わたしは知らない。
振り向きたくても、振り向けない。
ユウキは、いまどんな表情をしているのだろう?
見えない。見えないなあ。
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