Lamp in S.B.S.
ネット物書き音沼紗春の日記。 日常と、文章について。 時々、サイトの更新情報。
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二匹の蟻
と、いうわけで、実は二本立てでした。蟻。
テーマ「蟻」で、二つも授業中に書いていたのです、すみません。
もうひとつ投稿ー。
今度は現代の少女達。
これももうひとつも、少し前の季節ですよね。5月の話だ、きっと。
書いたのも、5月頭ですし。それだとちょっと早かったんですけどね。
テーマ「蟻」で、二つも授業中に書いていたのです、すみません。
もうひとつ投稿ー。
今度は現代の少女達。
これももうひとつも、少し前の季節ですよね。5月の話だ、きっと。
書いたのも、5月頭ですし。それだとちょっと早かったんですけどね。
・足元の蟻
「蟻を殺したこと、ある?」
その日は朝から初夏の陽気で、手をパタパタと団扇代わりにしてしまう程の暑さだった。これから始まる本格的な夏を思って早くも意気消沈している昼休み、問われたわたしは伏せていた顔をあげた。
「何だって?」
問うた友人の彼女は、太陽を恨んでいるとでもいうような視線で窓の外を見ていた。「だからさ、小さい頃でもいつでもいいんだけど、蟻を殺したことってある?」
ああ、そういえばもう蟻が出てくる季節だ、なんて思いながら、うーん、とうなる。
「あると思うよ。小さい頃とか、別にここ数年でも。しゃがみこんで、えい、って。あんまり覚えていないけど」
一つ、あるいはいくつもの命を奪っているのに、それを覚えていない。傲慢だ、人間は。と、軽い気持ちで思った。多分、夏の暑さに頭がいかれたせいで、そんなことをしてしまったのだ。
「ああ、それから、知らずに踏み潰してることもあるのかも」
地を這う蟻をいちいち気にして歩くことはない。だから、知らずに踏み潰してしまっていることもあるかもしれなかった。しかし、踏んだつもりでもその足をあげてみると、意外と奴らは平気な顔をしている。普段の歩行で潰してしまっている、ということは、もしかするとないのかもしれない。
「そう、それは違うってことが言いたかったの」
彼女はこちらを向いて、妙に真剣な表情で言う。まるで、夏から逃げたいがために別のことに熱中していたいのだ、とでもいうようだった。
「違うって?」
「だからさ、アンタが今言ったのってさ、つぶした、とか、踏んだ、ってことでしょ? それって言葉として、殺した、ってこととは違うんじゃないのかな」
小難しい顔をして、小難しいことを言う。意味がつかめなくて、わたしは問い返す。
「じゃあ、蟻を殺す、っていうのはどういうことなのよ」
そうなの、と彼女は身を乗り出してくる。
「こいつ邪魔だ、って思って、命を奪ってやろう、って思って潰すこと、かな」
「結局潰してんじゃん」
「だから、行動の元が違うんだって」
暑さのせいだろう。お互いに苛立ったような顔を付き合わせる。自分の考えを否定されるのはもちろん嫌だろう。だが、突然わけのわからない話をされたら否定もしたくなる。しかし、喧嘩がしたいわけではない。わたしは、ため息交じり、諦め交じり、それから諦めも混ぜた声で聞いてみる。
「じゃあ、アンタは蟻を殺したことがあるの?」
授業開始のチャイムが鳴って、彼女の声は聞こえなかった。
了
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